アジア失明予防の会

NPO アジア失明予防の会は、貧困のため十分な眼科治療が受けられず失明の危機に苦しむアジアの人々を救う支援を行っております。

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●  ベトナム人患者さんの角膜移植

 2003年10月23日に京都府立医科大学眼科、バプテスト眼科クリニックのご協力、ご支援のもとにバプテスト眼科クリニックにてベトナム人患者さんに対して角膜移植手術を行いました。
 患者さんは20歳男性で国立ハノイ貿易経済大学の学生です。2年前より視力低下を自覚し、水晶体の屈折異常ではないかとの診断のもと、昨年に両眼水晶体摘出術および眼内レンズ移植手術をハノイの眼科病院で受けましたが、術後も視力の回復は思わしくなく、ハノイのテレコム病院のHung医師を訪ねました。視力低下の原因は円錐角膜ではないかということで私にも相談があり、診察しましたところ確かに円錐角膜でした。Hung医師の病院には角膜形状解析装置もあり、それも診断を裏付けるものでした。視力は両眼とも矯正して0.1程度までしかでず、学業にも支障をきたしている状況でした。
 治療方法はまずコンタクトレンズの装用なのですが、残念ながらベトナムではコンタクトレンズをするという習慣がまだありませんのでほとんど普及しておらず、ましてや円錐角膜用の特殊なコンタクトレンズ等は手に入りません。角膜移植手術を受けるにしてもいつになるかわかりません。母校には木下教授を筆頭に角膜の専門医がそろっていますので、治療をうけるのであれば日本で受けてはどうかと薦めましたところ、患者さんもそのご両親も日本での治療を強く希望され、また日本側の受け入れも木下教授、中島院長のご好意によりスムーズに準備が整いました。

 順風満帆かに思えましたが、ここでひとつの問題が起きました。それはビザの発給についてでした。ベトナム人など外国人が日本へ入国するにはビザの取得が必要なのです。治療するために日本へ行くということを説明してもベトナムの日本大使館はなかなかビザの発給を認めませんでした。これは不法入国や滞在を防ぐためですが、小生が詳細な手紙を書いて商社丸紅の石黒さんが身元引受人となってもらって、やっとのことでビザの発給が認められたという経緯がありました。

 手術費用をなるべく安く抑えるために、心電図・血液検査・胸部レントゲン検査・肺機能検査などベトナムで行える検査はすべて現地で行ってもらうようにと中島院長から助言をいただきました。しかし、検査結果を日本へ持ち帰ってみてみますとベトナム語で書いてある所見も多くあり、解読するのに苦労しましたが、ちょうどこのときにベトナムより留学に来ていたDr.Diemの協力で検査結果を理解することができました。
術前には入院時の説明、麻酔の説明、手術の説明など説明することが多く、言葉の違いにより戸惑うこともいろいろありました。患者さんはある程度の日常英会話はできますが、治療のための専門用語になると理解でない箇所が多くあり、まず小生が英訳しHung医師がベトナム語に訳すという2段階で説明を行いました。
 手術は円錐角膜が進行している左眼だけ行い、右眼はコンタクトレンズにて経過観察することになりました。コンタクトをするのは全くはじめてなので、Hung医師がつきっきりで装着の指導をしていましが、初日に早速コンタクトレンズを失くしてしまうというハプニングがありました。サンコンタクトレンズ社のご好意により、もうひとつスペアーをいただくことができ大変感激していました。
 手術は全身麻酔下で木下教授が執刀されました。手術時間は1時間弱くらいで終了しました。手術中木下教授は少し緊張気味でしたが、術後の屈折の状態を考慮に入れて角膜移植片の逢着の糸の締め方を調整するという技術は流石その道のプロだと感嘆致しました。
 入院中はなかなか日本食が食べられず、ベトナムより持参したラーメンばかり食べていました。これではせっかく手術が成功しても栄養状態のバランスが心配だったので、なんとか日本食に慣れてもらおうと病院と相談し、朝はパン食にお昼は麺類と工夫していただきました。はじめは無理やりのようでしたが、徐々に食べられるようになり、退院前にはすべて平らげるようになり日本食が大変好物になりました。その後ベトナムに帰ってからはしばらくうどんばかり食べていて、ベトナム料理は食べられなかったと聞きました。
 術後経過は順調で1週間後に退院し、ベトナムへ帰国してからも経過良好で現在、右眼はコンタクトにて矯正して1.0、左眼は裸眼で0.4と回復しており元気に大学に通っているとのことです。関係者の皆様のご支援・ご協力に対して感謝いたします。ありがとうございました。

Dr.HungとVサインをする患者さん(新幹線内)
術前リラックスするために茶の作法の受講中
術前の診察をうけているところ(木下教授)
円錐角膜外来でコンタクトレンズの指導中
角膜移植の手術中(木下教授)
左から私、Dr.Hung、木下教授、Dr.Diem
視力回復しバイクを颯爽と運転する患者さん
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